2007年12月10日月曜日

副腎不全を合併したC型肝炎

肝炎ウイルスマーカーが陽性だと、それによる肝障害と思い込んで他の病気に気付くのが遅れることがあります。
今回は副腎不全の診断に苦慮した1例を紹介します。

症例は62歳、男性。食思不振で当院受診。肝障害およびHCV抗体陽性があり、当科紹介。強ミノCを投与するも肝障害の改善傾向に乏しく,全身倦怠感,食思不振は増強した。心身症を疑い,初診から3ヶ月目よりデプロメール開始するも無効。 初診後4ヶ月目の 血液検査で低Na血症(124 mEq/l)を認めたため,副腎不全を疑いホルモンを測定したところコーチゾールS 1.1μg/dl,17-KS「 0.3mg/day, 17-OHCS 0.8mg/dayと副腎不全であった。さらにTSH 0.30 μU/ml, free-T4 0.38 ng/dl, free-T3 1.7 ng/dlと甲状腺機能低下症も合併していた。MRIで下垂体に嚢胞あり,これによる圧排で副腎および甲状腺刺激ホルモンの分泌が低下した機能低下症と考えられた。
ステロイド補充(ソルコーテフ100mg→コートリル10mg2錠)+甲状腺ホルモン内服で、症状および肝機能は著明に改善した。


2007年11月18日日曜日

自己免疫性肝炎と誤診しかけた薬物性肝障害

一般の方は健康食品で肝障害をおこす認識はほとんどなく、病歴を聴取する時に「クスリ」として申告してくれないことがしばしばあります。

今回は、自己免疫性肝炎と誤診しそうになった症例を紹介します。症例は47歳、女性。SLEで経過観察中でした(ステロイド内服なし)。肝障害の悪化があり精査目的で入院となりました。抗核抗体2560倍、γグロブリン1.47g/dl、ウイルスマーカー陰性、飲酒なし。以上の病歴から自己免疫性肝炎の国際スコアが生検所見なしでも14点(疑診)であり、自己免疫性肝炎を強く疑いました。 10月6日に肝生検を施行。炎症細胞浸潤はほとんどなく、肝細胞の変性所見が目立ち、代謝障害が疑われる組織像でした。病歴を再度聴取すると、入院の1年前から健康食品を内服し 、入院1ヶ月前より内服量を増量していたことが判明しました。健康食品を10月8日から中止すると肝機能は1週間後あたりから著明に改善しました。

最近は健康食品による薬物性肝障害も増加しています。2005年の肝臓学会誌に民間薬、健康食品による薬物性肝障害の論文も掲載されており、肝炎の鑑別として注意が必要な領域と思います。http://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/46/3/142/_pdf

2007年11月11日日曜日

慢性肝炎の治療ガイド 2008

日本肝臓学会 編纂の「慢性肝炎の治療ガイド 2008」が  文光堂から発行されました (2007/10)。

内容は急性肝炎から肝癌まで広範にわたっていますが、非常にコンパクトにまとまっており、研修医の先生にはお勧めですし、予備知識のある患者さんも十分理解できる内容と思います。

肝臓学会公認の本ですので、現時点では最も信頼に足る内容を持った本といえます。

http://www.amazon.co.jp/%E6%85%A2%E6%80%A7%E8%82%9D%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89-2008-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%82%9D%E8%87%93%E5%AD%A6%E4%BC%9A/dp/4830618671/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1198033046&sr=1-1

2007年10月28日日曜日

門脈圧亢進症における脾臓の重要性

JDDW2007の肝臓学会のワークショップ6「肝疾患における脾臓摘出術・部分的脾動脈塞栓療法(PSE)の功罪」で、脾摘、PSEで脾静脈血流が低下させることで門亢症が劇的に改善すること(静脈瘤の改善は47%、portal hypertensive gastropathyの改善は43-60%)、さらに血小板が増加することでC型肝炎に対するIFN療法や肝臓癌に対する化学療法が完遂できることが報告されました。
従来より脾摘の効果は学会誌などで報告されていましたが、PSEも脾臓体積の70%以上を塞栓すると脾摘に匹敵する効果が得られることがわかってきました。一方で塞栓の範囲が30%以下と不十分な場合は血小板増加などの効果は一過性であること。さらに巨脾の症例では広範な塞栓(540ml以上)は合併症が多くなることも報告されました。また、Child C患者では期待した効果が得られにくく、本療法は肝予備能に比較して脾腫および門亢症が目立つ症例が良い適応である印象を受けました。
脾摘後の血栓症も10%程度にみられ、抗凝固療法と慎重な経過観察が必要であることも合わせて報告されていました。



2007年10月22日月曜日

C型肝炎の新情報(JDDW2007)

JDDW2007 KobeでC型肝炎について勉強してきました。

C型肝炎では12週までにHCV-RNAが消失するearly virologic response (EVR) 例ではPEGインターフェロン+リバビリン48週投与の有効性が高いこと、EVR達成が難しい条件として、高齢女性、初期投与量不足が挙げられ、投与期間の延長(72週)が有効であることが以前から指摘されていましたが、本学会で多施設の多くの症例に基づくデータからほぼ確認されました。

さらにreal time PCRによるHCV-RNA定量の出現で、IFN治療中のより詳細なウイルス変動を観察することが可能となることが紹介されました。

本法は現在使用されているアンプリコア法の定性よりも少ない量のウイルスを測定することが可能な一方で、高ウイルス量でも定量性があること、genotypeでウイルス量が左右されない利点もあり、本法が保険適応になれば肝炎診療、特にIFN治療は劇的に変化するものと思われます。

2007年10月21日日曜日

エンテカビル耐性出現率

JDDW-2007でエンテカビル国内治験における耐性出現率の報告がありました。

初回投与例では3年で約3%でしたが、lamivudine耐性例では3年で35%の結果でした。
有意差はありませんが、エンテカビルの初回投与量が少ない症例でやや耐性ウイルスの出現が多い傾向にありました(0.01~0.1mg群で4%、0.5mg群で1.5%)。

2007年10月1日月曜日

ベザトールが有効であった原発性胆汁性肝硬変

原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療薬としてはウルソデオキシコール酸が有名ですが、最近高脂血症の治療薬であるbezafibrate(商品名ベザトール)に胆汁排泄促進作用があり、PBCの治療薬として認知されるようになっています。今回はベザトールが有効であったPBC例を経験しましたので報告します。

症例は30歳代後半の女性です。抗ミトコンドリア抗体陽性で胆汁うっ滞型肝障害を呈することよりPBCと診断されました。2006年9月よりウルソデオキシコール酸の内服を開始しましたが、肝機能の改善は今一歩でした。2007年6月よりベザトールの併用を開始したところ肝機能の改善をみています。
ベザトールは投与開始して半年以上経過しても改善傾向が続くこともあるので、後日、その後の経過を報告します。

      
   

2007年9月23日日曜日

エンテカビル(商品名バラクルード)の長期投与が可能となります

2006年9月にB型肝炎ウイルスに対する内服の抗ウイルス剤のエンテカビル(商品名 バラクルード)が保険収載となり、B型肝炎の治療の幅が広がりましたが,新薬のため2週間しか処方できませんでした。発売から1年が経過し,10月1日より2週間以上の長期投与が可能となります。



これまで仕事を休んで薬を取りに来られていた患者さんの負担が軽くなります。



2007年9月15日土曜日

超音波造影剤

東京医大の森安史典先生の講演会があり、新しい超音波造影剤「ソナゾイド」について勉強してきました。

すでに学会などで動脈相における造影効果には驚いていましたが、今回の講演では単に造影早期の腫瘍のvascularityの評価だけでなく、造影剤注入後20-30分のKupffer image(肝細胞癌では造影剤が抜ける)を利用して、ラジオ波焼灼療法を行ったり、Kupffer imageで抜けた部分についてもう一度造影剤を注入することで動脈相を評価するなど色々な工夫を拝聴できました。

唯一残念なことはこのような素晴らしい造影は最新鋭の超音波診断装置でないと行えないことです。このような装置が広く普及して肝癌の診断、治療診療がより早期に行えるようになることを祈っています。




2007年9月10日月曜日

Wilson病の長期経過(超音波像を中心に)

2007.6.23のブログに健診で発見されたWilson病を紹介しましたが,15年以上前に無症状で発見され,D-ペニシラミンで治療を続けていたWilson病の患者さんで久しぶりに超音波をとる機会がありました。診断時にみられた結節エコーはかなり消失し,きれいになっていました。

肝硬変でも原因を取ってやればよくなる症例と思われ紹介させていただきます。今後はB型肝硬変やC型肝硬変でも核酸アナログやインターフェロンで肝硬変がよくなる症例も増えてくると思います。

診断時16歳男性。 診断時 セルロプラスミン 2.7 mg/dl, 尿中銅 815.3μg/day






2007年9月1日土曜日

HBs抗原が陰性化したHBVキャリアに発生した肝細胞癌

高齢になるとHBVキャリアでもHBs抗原が陰性化して、一見、基礎肝疾患なしと間違える症例があります。今回はそのような症例で肝細胞癌の合併を経験しましたので紹介します。
本症例はHBs抗原陽性の時期がわかっていますので、HBVキャリアと診断できますが、そのような過去がわからない症例では、HBc抗体高値が診断に役に立ちます。

75歳、男性。たまたま行った超音波で肝SOLを指摘され紹介。10年前にHBs抗原陽性といわれたことがあるが放置。
Alb  4.0 mg/dl,   ChE  225  IU/l, T-BIL 0.6 mg/dl,  AST 26 IU/l,  ALT 21 IU/l, LDH 173 IU/l,
γ-GTP   50  IU/l,  AFP  6 ng/ml,  PIVKA-2 141 mAU/ml,  Plt 15.2万, PT活性 100%
HBs抗原(-), HBs抗体(-), HBe抗原(-), HBe抗体(+)98.3%, HBc抗体: 原血清  97.6%、200倍希釈93.9%

画像は典型的な肝細胞癌



2007年7月22日日曜日

サイトメガロウイルスによる伝染性単核球症

生活スタイルの変化により、かつては成人に達するまでにほぼ100%に近い感染率であったサイトメガロウイルス感染症ですが、成人以降で初感染の事例が増えています。今回、典型例を経験したので紹介します。

27歳、男性
入院1週間前より39℃台の発熱が続いていた。近医で感冒として加療を受けるも改善せず、当院受診。肝障害も認め入院。
発熱、全身倦怠感、食欲不振以外には呼吸器症状、消化器症状はなし。
飲酒歴:なし、喫煙歴:なし
最近、多忙で寝不足が続いていた。
入院時の採血で末梢血に異型リンパ球を認めるとともにIgM型のCMV抗体が高値(IgG型も軽度上昇、EBウイルスは既感染パターン)でサイトメガロウイルスによる伝染性単核球症と診断した。入院後も1週間は38℃近い発熱が続いたが、2週目より改善傾向になり、2週で退院となった。

かつては成人のサイトメガロウイルス感染症を見たら免疫不全症(特にAIDS)を疑いましたが、近年は健康成人例が増えています。原因としては成人までの感染機会が減少していることと、本例のように過労から一時的な免疫不全状態になってウイルスが増殖し、病状を悪化させているものと推測されます。

夜更かしと免疫不全については下記の本がわかりやすく解説しています。皆さんも睡眠はしっかり取りましょう。

人生、寝たもの勝ち (単行本)
ポール マーティン (著), Paul Martin (原著), 奥原 由希子 (翻訳)
よく生きるための眠り
たっぷり眠ると……
寿命が延びる
事故に遭わない
免疫力が向上する
記憶力がよくなる
スムーズな人づきあいができる
眠る人にが福が来る

2007年7月15日日曜日

B型肝炎に対するエンテカビル療法

2007年6月16日に岡山で開催された虎の門病院、熊田博光先生のB型肝炎に対するエンテカビル療法の講演会を聞いてきました。
最近、問題になっているエンテカビル耐性ウイルスについての詳しい話が聞けましたので紹介します。

国内治験症例(抗ウイルス剤初回投与例)での検討では、投与開始3年の時点で開始時のウイルス量が非常に多かった症例群で約3%、少なかった群で約1.5%の出現率でした。ただし、解析が終わったのが半数の症例であり、最終的にはこの倍の頻度になるのではないかとのコメントでした。

一方、ラミブジン耐性症例での検討では、投与開始3年で24%の出現率でした。ただし、約1/3の症例で解析が終わっておらず、最終的には35%程度になるのではないかとのコメントでした。
ラミブジン耐性症例に対して以前より行われているアデフォビルとの併用療法については、自験例の成績で、HBV-DNA陰性化率が48週49%、96週66%、144週84%で、ALT正常化率も3年で92%であり、ラミブジン耐性例には従来通りアデフォビルの併用が推奨される成績でした。

以上を踏まえ2007年度版の治療ガイドラインが示されました。





















2007年7月8日日曜日

C型肝炎に対するペグインターフェロン+リバビリン併用療法の実際

2007年6月21日に倉敷で開かれた川崎医大肝胆膵内科、久保木眞先生のペグインターフェロン+リバビリン併用療法の講演会を聞いてきました。

お一人で1000例以上のIFN治療経験がある先生だけに、日本の大家と呼ばれる先生の講演でも聞かれないような細かなノウハウを聞くことができました。

困った副作用
・皮疹:抗アレルギー剤やステロイド外用剤で辛抱しているとそのうちに軽快してくる症例も多い。困った場合は少量のステロイドの短期投与が有効。
・口内炎:一般的な口内炎の治療は無効なことが多く、プレドニン5mg4日程度の投与が有効なことがある。
・血小板減少:血小板容積(MPV)が増えてこない症例では骨髄での血小板産生が亢進していないので出血のリスクが高くなるのでIFNの減量が望ましい。

高齢者(65歳以上)
・ペグインターフェロンの量は1.2μg/kgで開始。体重が減少したら、その体重にあわせてIFNの量を10μg単位で減量
・リバビリンは10mg/kgで開始。100mg単位で調節。500mgの場合は600mg(3cap)と400mg(2cap)を隔日に投与することで平均500mg投与とする。

インターフェロン抗体(PEG-IFNα2aの成績)
・治験では4.1%の出現率。
・自験例ではIFN治療歴のない症例で3.8%、治療歴のある症例で20%であった。
・IFN抗体が出現した症例では他のα型製剤に対しても交叉反応があることが多く、β型での治療が必要になる。


    2007年6月30日土曜日

    肝硬変と亜鉛欠乏

    最近,亜鉛欠乏で種々の神経症状をおこすことが報告されています。
    http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2006dir/n2709dir/n2709_03.htm

    肝硬変では解毒能が低下してアンモニアが蓄積する肝性脳症をおこしますが,今回,肝性脳症に亜鉛欠乏による意識障害を合併した症例を経験したので紹介します。

    63歳,男性,C型肝硬変。約10年間の肝硬変の治療歴あり。3年前から肝性脳症で入退院を繰り返していました。
    自宅療養が困難なため長期療養型施設に転院。転院後は胃潰瘍治療薬のポラプレジンク(亜鉛含有)が中止されていました。
    転院6週で昏睡状態となり,当科に紹介入院となりました。入院時のアンモニアは123と低下していましたが,意識レベルの改善は今一歩でした。
    意識レベルの低下に微量元素特に亜鉛が欠乏している可能性も考慮し、微量元素を点滴で投与したところ,翌日には意識レベルの改善を認め、食事摂取も良好となりました。
    微量元素開始前の亜鉛は34μg/dlと低値でした。

    最近,肝硬変患者さんでは亜鉛が欠乏しやすく,アンモニア代謝にも影響を及ぼしているとの報告も見られるようになっています。
    http://www.ajimed.net/kanzou/tnc/tnc08_01.html

    胃潰瘍治療薬のポラプレジンクには亜鉛が含まれており,これを内服するだけで亜鉛欠乏症が改善する報告もあります。
    肝硬変患者さんでは亜鉛欠乏にも注意が必要です。




    2007年6月23日土曜日

    健診で発見されたWilson病

    Wilson病は肝臓に銅がたまり、進行すると肝硬変になる病気です。
    脳にも銅がたまって神経症状も出ます。昔は神経症状が出てから発見される症例が多かったですが、最近は35%程度になっているようです(Up To Dateによる)。
    最近、健診で肝機能異常を指摘されたことが発見のきっかけになったWilson病を経験しました。

    症例:19歳、男性
    健診で肝障害を指摘され受診。超音波で肝内エコーがかなり乱れ、結節様エコーを認めるとともに、脾腫も認めた。Wilson病が疑われ、精査を行ったところ血中セルロプラスミン・銅の低値、尿中銅排泄の亢進、Kayser-Fleischer ringを認め、Wilson病と診断された。



    Alb 3.4 g/dl, T-Bil 0.6 mg/dl, AST 51 IU/l, ALT 72 IU/l, LDH 192IU/l, ALP 694 IU/l, γ-GTP 83 IU/l, WBC 3600/μl,  Hb 13.2 g/dl, Plt 14.5万/μl
    セルロプラスミン 5 mg/dl (正常値21-37), Cu 42 μg/dl (正常値68-128), フエリチン 302 ng/ml, 肝炎ウイルスマーカー陰性 尿中銅 185.5μg/day (正常値4.2-33.0)
    若年の肝疾患において超音波で結節様エコーを認めるのはWilson病、B型肝炎の頻度が高いです(B型肝炎は感染予防対策が功を奏して現在は激減しました)。

    超音波所見の重要性を認識した症例でした。

    2007年6月9日土曜日

    腫瘤の周りにfocal spared areaを形成した肝血管腫の1例

    腫瘤の周りにfocal spared areaを形成した肝血管腫を経験しましたので以下に画像と解説を示します

    50歳代女性

    腹痛の精査目的で他院で超音波検査を行ったところ肝右葉に5cm大の腫瘤を認め、当科紹介となりました。

    内部エコーは不均一な高エコーで辺縁に低エコー帯あり。非腫瘤部は脂肪肝。カラードプラでは辺縁低エコー部に一致して血流エコーあり。腫瘤内部にはドプラで描出されるレベルの血管は認めませんでした。

    カラードプラ所見は肝癌としては非典型的でしたが、他の所見は肝癌を疑わせる所見であったため造影CTを施行しました。CTでは典型的な血管腫でした。

    腫瘤辺縁に動脈血流が豊富であり、動脈血流優位になったために脂肪が沈着せず、focal spared areaを形成し、肝癌に類似した辺縁低エコーを呈したものと思われました。


    2007年6月6日水曜日

    麻疹による肝炎

    成人の麻疹が流行しています。
    先日、肝炎+皮疹の精査で30代前半の患者さんが紹介されましたが麻疹でした。
    大人の麻疹をみたのは初めてで皮疹も子供よりも華々しかったです。参考までに写真を載せておきます。

    30歳代、男性

    2007年5月下旬より39℃台の発熱あり。感冒として近医で加療を受けていたが改善傾向なし。約1週間しても解熱しないことと、症状発現時から徐々に増悪していた皮疹が発病後5日目には全身に広がり、腕では癒合傾向になったため受診。麻疹既往なし。ワクチン接種なし。

    頸部リンパ節:腫大なし、口腔内:コプリック斑あり  耳介後部:紅斑顕著  躯幹、上肢>下肢 に融合傾向のある点状紅斑~丘疹あり











    2007年5月14日月曜日

    Hepatitis C Japan Summit 2007に行ってきました

    2007年5月12日に東京で開催されたHepatitis C Japan Summit 2007(シェリング・プラウ主催)に行ってきました。

    日本におけるペグ・インターフェロン+リバビリン併用療法の現状と問題点についてしっかりした議論がなされました。

    印象に残った内容を以下に示します。

    ①高齢女性で効果が低下:高齢女性で持続的なウイルス消失(SVR)率が低下することが各施設から報告されました。原因についてははっきりしませんが、投与期間の延長やインターフェロンやリバビリンの減量を慎重に行うべきとの意見が出ました。

    ②治療開始12~24週でのウイルス陰性化例の扱いについて:この時期にウイルスが陰性化した症例は、開始後早期に陰性化した症例に比べて48週投与では効果不十分になる可能性が高いこと、72週投与を行った症例でSVR率が改善することが報告されました。

    ③インターフェロンおよびリバビリンの投与量について:インターフェロンの減量がSVR率に大きく影響することが報告されました。ペグ・インターフェロンは1.0μg/kg以上の投与が望ましく、投与量を減量した場合は予測される総投与量の80%以上は確保できるよう投与期間の延長などの工夫が必要との意見が出ました。

    ④患者さんへのアンケート:副作用の説明が十分できていない事例があることがわかりました。皮膚症状の説明が十分でない例が多いようです。一般向けには http://www.c-kan.net/のページがありますが、皮膚症状の説明は簡単なようです。今後、詳しい説明ページを見つけたら、ブログでも紹介したいと思います。以下にアンケート内容の抜粋を載せておきます。

    患者アンケート

    投与前に不安に思うこと
      ①     副作用
      ②     治療効果
      ③     治療期間
     ④     費用

    途中でやめたいと思う理由
     ①     副作用(全身倦怠感 31%、皮膚症状 23%、貧血 9%、脱毛 9%
     ②     治療期間
     ③     費用

    最もつらいと感じた時期
     開始02ヶ月 60%
     開始24ヶ月 31%
     開始46ヶ月 23%

    3割の患者さんが治療開始前の副作用の説明が不十分と感じていた
     不十分と思われた副作用
      ①     皮膚症状(かゆみ、皮疹) 31%
      ②     頭痛、体重減少      21%
      ③     消化器症状        12% 

    2007年4月23日月曜日

    HBV-DNA量と発癌の関係

    エンテカビルのPRページに、HBV-DNAと肝硬変、肝癌発生の関係を示したスライドがありました。いずれも海外の一流紙に掲載されている内容であり、ウイルスを抑制することの根拠となる論文と思われます。

    2007年4月8日日曜日

    エンテカビル耐性ウイルス

    B型肝炎ウイルスに対する新しい抗ウイルス薬であるエンテカビルは昨年9月から本邦でも保険適応になりましたが,耐性ウイルスの出現が報告されるようになりました。

    先日,京都で開かれたAPASL(アジア太平洋肝臓学会)に出席した先生のお話では,国内治験で抗ウイルス剤初回投与の66例のうち,3年の時点で2例にエンテカビル耐性が確認されたとのことです。他に2例,HBV-DNAが再上昇した症例があり,耐性を確認中とのことです。

    一方で,抗ウイルス効果が持続している症例では肝機能や組織的な改善には目を見張るものがあり,急速に肝炎のステージが進行し,肝機能が低下している症例では十分なインフォームドコンセントのもとに使用を考えるべきと思います。


    ブログ開設しました

    以前に肝臓病のホームページを作りましたが,ホームページの更新が大変で現在は挫折しています。



    本ブログで肩の力を抜いた肝臓病の話を書いていきたいと思います。