2007年10月28日日曜日

門脈圧亢進症における脾臓の重要性

JDDW2007の肝臓学会のワークショップ6「肝疾患における脾臓摘出術・部分的脾動脈塞栓療法(PSE)の功罪」で、脾摘、PSEで脾静脈血流が低下させることで門亢症が劇的に改善すること(静脈瘤の改善は47%、portal hypertensive gastropathyの改善は43-60%)、さらに血小板が増加することでC型肝炎に対するIFN療法や肝臓癌に対する化学療法が完遂できることが報告されました。
従来より脾摘の効果は学会誌などで報告されていましたが、PSEも脾臓体積の70%以上を塞栓すると脾摘に匹敵する効果が得られることがわかってきました。一方で塞栓の範囲が30%以下と不十分な場合は血小板増加などの効果は一過性であること。さらに巨脾の症例では広範な塞栓(540ml以上)は合併症が多くなることも報告されました。また、Child C患者では期待した効果が得られにくく、本療法は肝予備能に比較して脾腫および門亢症が目立つ症例が良い適応である印象を受けました。
脾摘後の血栓症も10%程度にみられ、抗凝固療法と慎重な経過観察が必要であることも合わせて報告されていました。



2007年10月22日月曜日

C型肝炎の新情報(JDDW2007)

JDDW2007 KobeでC型肝炎について勉強してきました。

C型肝炎では12週までにHCV-RNAが消失するearly virologic response (EVR) 例ではPEGインターフェロン+リバビリン48週投与の有効性が高いこと、EVR達成が難しい条件として、高齢女性、初期投与量不足が挙げられ、投与期間の延長(72週)が有効であることが以前から指摘されていましたが、本学会で多施設の多くの症例に基づくデータからほぼ確認されました。

さらにreal time PCRによるHCV-RNA定量の出現で、IFN治療中のより詳細なウイルス変動を観察することが可能となることが紹介されました。

本法は現在使用されているアンプリコア法の定性よりも少ない量のウイルスを測定することが可能な一方で、高ウイルス量でも定量性があること、genotypeでウイルス量が左右されない利点もあり、本法が保険適応になれば肝炎診療、特にIFN治療は劇的に変化するものと思われます。

2007年10月21日日曜日

エンテカビル耐性出現率

JDDW-2007でエンテカビル国内治験における耐性出現率の報告がありました。

初回投与例では3年で約3%でしたが、lamivudine耐性例では3年で35%の結果でした。
有意差はありませんが、エンテカビルの初回投与量が少ない症例でやや耐性ウイルスの出現が多い傾向にありました(0.01~0.1mg群で4%、0.5mg群で1.5%)。

2007年10月1日月曜日

ベザトールが有効であった原発性胆汁性肝硬変

原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療薬としてはウルソデオキシコール酸が有名ですが、最近高脂血症の治療薬であるbezafibrate(商品名ベザトール)に胆汁排泄促進作用があり、PBCの治療薬として認知されるようになっています。今回はベザトールが有効であったPBC例を経験しましたので報告します。

症例は30歳代後半の女性です。抗ミトコンドリア抗体陽性で胆汁うっ滞型肝障害を呈することよりPBCと診断されました。2006年9月よりウルソデオキシコール酸の内服を開始しましたが、肝機能の改善は今一歩でした。2007年6月よりベザトールの併用を開始したところ肝機能の改善をみています。
ベザトールは投与開始して半年以上経過しても改善傾向が続くこともあるので、後日、その後の経過を報告します。