2011年5月30日月曜日

老化におけるAGE (advanced glycation endproducts) の重要性

5月19日放送の「ためしてガッテン」で、老化に深く関係したAGE (advanced glycation endproducts) が紹介されていました。
AGEはタンパク質が過剰な糖と時間をかけて反応することで生成されます。
AGEはいろいろな臓器に蓄積することで、①皮膚の衰え、②骨のもろさ、③眼の水晶体の濁り、④動脈硬化などを引き起こします。

以前のブログで、高脂血症の薬で悪玉コレステロール(LDL)を下げても、動脈硬化は100%予防できないことを紹介しましたが、この高血糖→AGE生成の経路が関わっている可能性があります。

高血糖を予防する食事療法として、食事の最初に多くの野菜を摂ることが推奨されていました。
これは、野菜で満腹になって、余計なご飯を食べないという効果に加え、食物繊維で糖の吸収が遅れて、血糖値の上昇がゆるやかになることで食後の空腹感が強くならないことがあげられていました。

キング・カズ(三浦知良)の食事

サッカー、日本代表、長谷部誠の「心を整える」を読みました。キング・カズ(三浦知良)と一緒に食事をした一節がありますが、その中で、彼のメニュー選びを紹介しています。

「カズさんがキングたる所以は,メニュー選びの時に感じさせられた。野菜をたっぷり注文し,炭水化物はほとんど頼まない。試合の前はエネルギー元となる炭水化物を摂った方がいいけれど,普段は余計な脂肪がついてしまうからだ。やっぱりキングは違うと驚かされた。当然デザートも食べない」

三浦知良氏は今年44歳を迎えましたが、いまだに現役です。
炭水化物を筋肉を使う試合以外の日には極力摂らないようにして体型を維持しているということは、同年代で運動をほとんどしていない男性は炭水化物(ご飯、麺類、パン)をかなり制限しないといけないことになります。
また、野菜を沢山摂ることの効用については、5月18日に放送された「ためしてガッテン」でも紹介されていました。これについては、別の日に紹介したいと思います。

2011年5月27日金曜日

ロコモティブ症候群の原因としての筋力低下

ロコモティブ症候群は運動器の障害によって、日常生活に支障を来す病態です。

ここで言われている運動器には
支持機構の中心となる骨
②支持機構の中の動く部分である関節軟骨,脊椎の椎間板
③実際に動かす筋肉,神経系
があります。

特に筋肉の役割は重要です。
筋肉の作用には関節を動かす作用だけでなく,桔抗筋との同時収縮により,下肢運動の減速,関節への安定性の付与,衝撃吸収作用があります。

関連ブログ
ロコモティブ症候群

2011年5月26日木曜日

循環障害による肝障害④ うっ血肝

慢性うっ血肝では胆汁うっ滞型肝障害を呈することを紹介しましたが、透析患者で除水不足で水余りになった患者さんで胆汁うっ滞型肝障害を認めました。除水してdry weightを下げることで、検査値は改善しました。


文献的には心臓移植前後の肝機能を比較したものがあり、うっ血の改善とともにALP、γGTPが改善することが報告されています(Transpl Int. 2005; 18: 697-702)

2011年5月25日水曜日

ロコモティブ症候群

メタボリック症候群(メタボ)は市民権を得ましたが、整形外科領域からロコモティブ症候群(ロコモ)が提唱され、最近はテレビなどで少しずつ紹介されるようになっています。

ロコモティブ症候群は、運動器の障害による要介護の状態や要介護リスクの高い状態を表す新しい言葉で、和文は「運動器症候群」です。
ロコモティブ(Locomotive)は「運動の」の意味で、機関車という意味もあり、能動的な意味合いを持つ言葉です。


整形外科学会は自分で気付くためのツールとして「ロコチェック(ロコモーションチェック)」と、ロコモ対策としての運動「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」を作成しています。
整形外科学会HP内からパンフレットがダウンロードできます。
http://www.joa.or.jp/jp/public/locomo/locomo_pamphlet.pdf
以下のような図解入りでわかりやすくロコモティブ症候群が紹介されています。






2011年5月22日日曜日

脂肪肝の生活指導の難しさ

脂肪肝を始めとする生活習慣病の治療において生活指導は最も重要な柱ですが、実践は難しいのが現実です。
本論文においては、生活指導がうまく行かなかった症例について検討されていますが、30~50代の働き盛りで多いこと(図)、うまくいかなかった理由として、仕事が忙しくて定期受診ができなかった(46%)、自分の病気について十分理解していなかった(23%)、プログラムに興味なかった(7%)、家族の介護(5%)が挙げられています (J Gastroenterology 44: 1203, 2009より引用)



日常の外来で感じていることがそのままデータになった印象を受けました。
この問題点を解決していかない限り、有効なメタボ対策を実施するのは難しいと感じますが、最近のIT技術の進歩を見ているとこれらの問題を解決する可能性をもった技術も出現しているように思います。
特にスマートフォンは、本論文でドロップアウトした働き盛りの世代が多数所有しており、将来有望と思われます。

2011年5月19日木曜日

動脈硬化の危険因子はLDLコレステロールのみか? R3iの取り組み

わが国では、死亡原因の第2位が心筋梗塞、狭心症などの心疾患、第3位が脳梗塞、脳出血などの脳血管疾患であり、両者を合計すると日本人の約3割が心血管疾患で死亡しています。
これらの心血管疾患に関係しているのが動脈硬化で、その発症・進展にLDLコレステロールが大きく関わっていると考えられ、現在ではスタチンを中心とする脂質低下療法が広く行われるようになり、それにより動脈硬化性疾患の発症リスクが減少することが数々の大規模スタディが証明しています。

しかしながら、近年登場した強力なスチタンでLDLコレステロール値を下げても、動脈硬化性疾患を確実に抑止できていません。
例えば、海外でアトルバスタチン80mg/日という高用量(国内では重症の家族性高コレステロール血症に対する最大用量が40mg/日)を用いて行われたスタディでは、同薬を10mg/日 用いた場合に比べて心血管イベント発生が6年間で10.7%が8.7%に減少して、相対リスクが22%減少していますが、大幅に抑止することに成功していません(N Engl J Med 352: 1425-1435, 2005)
この成績は動脈硬化性疾患を確実に抑えるには、LDLコレステロール値の管理だけでは不十分で、なんらかの「残された危険因子」があることを示しています。

その答えを探るために2008年に「R3i(Residual Risk Reduction Initiative)」という世界的な取り組みがスタートしました。これは世界40ヵ国で指導的な立場にある心疾患や内分泌領域の専門家が参加し、心血管疾患と細小血管障害について国際的な調査を進めるプログラムです。
www.r3i.org
高LDLコレステロール血症以外の危険因子としては現在、高トリグリセライド血症(とくに食後高トリグリセライド血症)、低HDLコレステロール血症、small dense LDLなどが知られており、これらへのアプローチもR3iプログラムの研究課題になっています。
これからの研究成果に期待したいと思います。

2011年5月13日金曜日

EOB取り込みが亢進した中分化型肝細胞癌

EOB取り込みが亢進した中分化型肝細胞癌 (肝胆膵画像 13: 220-222, 2011)

中分化型肝細胞癌では、EOBを肝細胞に取り込むことができず、肝細胞相でdefectになりますが、EOBを取り込む肝細胞癌あることが報告されています。
このような肝細胞癌では、OATP1B3やMRP2といったトランスポーターの発現が亢進している報告があります。
文献 1) J Gastroenterol 44: 793-798, 2009  2) Radiology 255: 824-833, 2010

EOBによる造影MRIで造影早期で濃染し、肝細胞相でEOBの取り込みが見られる肝腫瘍としては、EOB取り込みが亢進した中分化型肝細胞癌の他にfocal nodular hyperplasia (FNH)が考えられます。この二つの結節の鑑別は、sonazoidによる造影エコーのKupffer imageが有用と考えます。肝細胞癌ではdefectに、FNHではsonazoidの取り込みが認められる点が鑑別点になると思われます。

2011年5月11日水曜日

日本の中学生における脂肪肝

日本の中学生における脂肪肝 J Gastroenterology 45:656-665, 2010

2004年と2007年に長野県の中学生を対象にした調査で、約4%の生徒が脂肪肝であることが判明しました。
各種習慣と脂肪肝の関連は以下の表の通りで、問題になる生活習慣が明らかになりました。
この結果を見ると、中学生から正しい生活習慣を身に付けることが重要であることが再認識されます。

2011年5月9日月曜日

脂肪分を摂っていなくても体脂肪が増えることが・・・

健診で高脂血症を指摘されて受診される患者さんの多くが「私は油分は控えているのに、どうして脂肪が多いのか分からない」と話されます。
この体脂肪の大本は「糖質(炭水化物)」の摂り過ぎなのです。
炭水化物は本来は筋肉を動かすためのエネルギーでクルマにたとえるとガソリンです。
クルマの場合はガソリンタンクが一定で、ガソリンを無尽蔵に蓄えることはできませんが、人の場合は脂肪組織の中で糖質が脂肪に変わって無尽蔵に貯まっていきます。
これが脂肪組織です。
日本人は摂取エネルギーの6割を糖質(炭水化物)で摂っていますから、1600kcalを摂取している人は約1000kcalが糖質です。
これを運動で消費しようとすると大変なことがよく分かります。
痩せようと思ったら、糖質(炭水化物)の制限が重要です。
そして、運動を行ってカロリーの少量を少しでも多くすることも重要です。