2011年6月24日金曜日

歯周病が糖尿病や動脈硬化を悪化させる

6月22日放送のNHKためしてガッテン「緊急警報 免疫力を低下させ突然死を招く感染症が全国まん延中」で、歯周病菌が糖尿病や動脈硬化を悪化させる原因になっていることが紹介されました。

歯ぐきで歯周病菌が繁殖すると、体の免疫細胞が歯周病菌と戦うために集まってきます。歯周病菌をやっつけるために免疫細胞のマクロファージが仲間を呼ぶためにある物質(TNF-α)を放出しますが、この物質は一方で血液中のインスリンの働きを低下させ、糖尿病を悪化させます。番組ではインスリンの働きを阻害することから「阻害君」と呼ばれていました。

歯周病菌は歯ぐきから血管の中に入って、血液に含まれる血小板の中に入って血管の中を移動します。さらに菌から出る毒は、血小板や赤血球を集めて塊にしてしまう事が実験でわかりました。これが血管を詰める動脈硬化巣になっていきます。

歯周病のことを軽く見てはいけない。しっかりとケアをしていかなければと思いました。

2011年6月16日木曜日

脂肪性肝炎(NASH)における性差

脂肪性肝炎(NASH)の頻度は年齢別、性別でかなりの違いがあります。
それについて東京女子医大の橋本先生が論文にされています。
   (J Gastroenterology 46(suppl1) 63-69, 2011)



脂肪肝全体の頻度は男性では30歳以降で25%を超えています。女性では閉経後の50歳以降での脂肪肝の頻度が20%前後になります。これらの成績から、健診を受ける中年以降の方は大体2割ぐらいが脂肪肝であるという認識を持っておく必要があります。


脂肪性肝炎については、若年では男性が多く、中年以降では女性が多い結果になっています。特に若年男性のNASHはファーストフードとの関連が推測されています。

肝硬変、肝臓癌については肝硬変は女性が多く、肝癌は男性がやや多い結果になっています。
通常のウイルス肝炎では、男性の頻度が圧倒的に多いのとは対照的な成績です。

2011年6月12日日曜日

糖質制限の重要性

長寿遺伝子サーチュインを発現させるのはカロリー制限であることは昨日のブログで紹介しましたが、日本人のカロリーオーバーの原因は何でしょうか?
日本人の摂取エネルギーの60%が炭水化物すなわち糖質です。
糖質を貯める場所は肝臓と筋肉のみしかなく、貯めることのできる量は肝臓が50~80g、筋肉が200~300gのみです。行き場を失った糖質が向かう先は脂肪組織で、脂肪組織は何kgでも貯えることができます。
糖質の脂肪組織の取り込みにはインスリンが重要な役割を果たします。すなわち、血糖値が上昇するとインスリンが多く分泌されます。肝臓や筋肉に貯えられず、運動でも消費されずに行き場を失った糖質が、大量に分泌されたインスリンによって、脂肪組織に移行するのです。
したがって、食後におこる高血糖は脂肪代謝の面からは望ましくないと言えます。

長寿遺伝子サーチュイン

NHKスペシャル「寿命は延ばせる」(6月12日)で長寿遺伝子、サーチュインが紹介されていました。
番組で紹介されていたアカゲザルの実験はあまりにも有名で、摂取カロリーを30%減らした群が長生きであったという結果ですが、長寿遺伝子サーチュインがカロリー制限群で発現が強かったことが分かり、長寿遺伝子の面からもカロリー制限の有効性が証明された形になりました。

それにしても、サーチュイン遺伝子の発現を最も増強させるのがカロリー制限だったというのは少し拍子抜けだったですね。
カロリー制限は誰でもできる治療法ですが、「言うは易く行うは難し」の諺通り、長期間実施し続けるのは困難です。
これを実現させることができる仕掛けを作ることが出来たら最高ですね。

2011年6月10日金曜日

メタボリックドミノ

最近、メタボリックドミノという概念が提唱されています(慶応大学内科、伊藤裕先生)

メタボリック症候群は複数の異常(食後高血糖、高血圧、脂質異常症)が同時多発性に進行していってさまざまな病気を起こす状態で、ドミノ倒しによく似ています。
初期の段階であれば、倒れるコマ(病気)も少なくて、進行を抑えることも可能ですが、ある程度病気が増えてからの進行予防はきわめて困難です。
伊藤先生は早期の段階での治療を提唱されています。

図の中で、脂肪肝はメタボ状態になってからの病気と位置付けられていますが、実際に健診で発見される脂肪肝の患者さんは、メタボリック症候群の基準を満たさない方も多くいらっしゃいます。

最近の健診のデータを見ても、超音波検査で受診者の2割以上に脂肪肝を認めており、初期から脂肪肝になっている方が多いと思われます。
メタボリックドミノで「脂肪肝」とされているのは肝硬変・肝臓癌に進行する可能性を持った「脂肪性肝炎」に相当するのではないかと思います。
個人的には、「脂肪肝」は図の上流の肥満とインスリン抵抗性のあたりに位置付けることができると思います。

健診で脂肪肝と診断されたら、将来的にはメタボリックドミノに進むと認識して、生活習慣の改善に取り組むことが重要と思います。
実際に、メタボ状態とそうでない脂肪肝の患者さんを比較すると、生活指導の反応性がかなり異なっています。メタボのない患者さんの方が、痩せやすく、血液検査値も改善しやすい傾向になっています。
メタボ状態の患者さんは平均年齢が高く、筋肉量も低下しています。

筋肉は「かまど」のようなもので、食物のエネルギーを燃やす臓器であることを以前のブログで紹介しました。

筋肉をつけないと痩せられない(クロワッサン2011年6月10日号)

メタボリック症候群が進行した人は「かまど」が小さく、食べたものが燃えにくく、余ったエネルギーは脂肪として蓄積しやすいと言えます。
こういった悪循環を断ち切るためにも、早期の段階での生活指導が望ましいと言えます。

動脈硬化の新たな危険因子が発見されました(超悪玉コレステロール)

以前のブログで、体内に過剰な糖分が存在するとタンパク質と反応して老化物質であるAGE (advanced glycation endproducts) が産生されて動脈硬化を促進されることを紹介しました。


過剰な糖分は悪玉コレステロールであるLDL-コレステロールと反応して、“超悪玉”コレステロールができることが分かりました(Diabetes 2011.5.26電子版)
この超悪玉コレステロールは血管壁に粘着性が特別に高いコレステロールで、通常のLDLとは違う機序で動脈の血管壁に付着して脂肪プラークを形成しやすく、これが心疾患や脳卒中につながるとのことです。


他のブログで、動脈硬化の危険因子がLDL-コレステロールのみでなく、他の因子を探索する研究R3i(Residual Risk Reduction Initiative)がスタートしていることを紹介しましたが、今回の超悪玉コレステロールの発見は、メタボ患者における動脈硬化予防を一歩進めるものと思います。
いずれにしても、高血糖が悪循環の出発点であることは間違いなく、高血糖を予防する治療の重要性が改めて認識されました。

関連ブログ
老化におけるAGE (advanced glycation endproducts) の重要性
動脈硬化の危険因子はLDLコレステロールのみか? R3iの取り組み

2011年6月9日木曜日

食欲をコントロールできる技 (NHKためしてガッテン 6月8日放送)

野生の動物に食べ物をどれだけ与えても、満腹中枢が働いて必要以上に食べ過ぎることはありません。

人間が食べ過ぎる原因には以下のようなものがあります。                          
①香り ②アルコール ③見た目 ④グルメ情報 ⑤甘み ⑥ダシ ⑦油脂 ⑧ストレス ⑨睡眠不足

番組では、糖分や油脂で食べ物に味付けをすると、通常は満腹中枢がきっちり働いている動物ですら食欲が出て余分に食べてしまう実例が示されていました。
私たちの食生活はこういった誘惑の罠だらけということになります。

しかしながら、その誘惑に打ち勝つ方法が、最近の研究で分かってきました。
その物質は脳内ヒスタミンで、ヒスタミンが食欲を抑えること、風邪薬に含まれる抗ヒスタミン剤はその作用を打ち消すことなどが分かってきました。
脳には血液脳関門という関所があり、ヒスタミンは血管から脳に入ることはできませんので、脳内での産生を高める工夫が必要です。

脳内でのヒスタミン産生を増やすためには、噛むことが有効なことが分かりました。
最も有効な噛み方として、一口を30回噛んで飲み込む食べ方が紹介されていました。

さらに脳内ヒスタミンは、脳内で食欲を抑制するとともに、交感神経を介してお腹の内臓脂肪の分解を促進する作用もあるそうです。

薬を使わずに生活習慣を改めることで思わぬ効果が得られることが分かり、まさに「ガッテン」でした。

2011年6月5日日曜日

筋肉をつけないと痩せられない(クロワッサン2011年6月10日号)

宮崎義憲(東京学芸大)
 筋肉はかまどのようなもの。運動してエネルギーを使うとき、かまどが少ないと限界があるが、かまどがいっぱいあると効率的にエネルギーを燃やすことができる。
無酸素運動の筋トレで筋肉を増やすと、有酸素運動がうんと楽に感じる。
 筋肉をつけることのメリットに体型の引き締め効果が挙げられる。大胸筋を鍛えればバストアップ、大殿筋を鍛えればヒップアップになる。
 腹筋の筋力アップで猫背も予防できる。人間の上半身は御用提灯のようなもので、肋骨の上に頭が乗って腕がぶら下がっている、ものすごく重い提灯。お腹の無きには腹圧という風船が入っていて胸郭を持ち上げている。横隔膜や腹筋がピンと張って風船が膨らんでいれば問題ないが、腹筋が衰えて風船がしぼむと猫背になる。
 「3」がキーワード、3分間で無酸素運動が有酸素運動になる、皮下脂肪が燃えるまで3週間待つ、運動は三日坊主でも良い(時々休んで疲労を蓄積しない)




石川沙樹(バレトン・トレーナー)
フィットネス、バレエ、ヨガの3つの動きが融合されたバレトンが注目されている。
筋トレと有酸素運動が効率よくできてダイエット効果が高い
120分のトレーニングで効果あり。
You Tubeの動画 http://www.youtube.com/watch?v=AyiEqPuXI4c

フィットネス:身体に負担をかけずに筋トレができる
バレエ:美しいボディラインを作る、
ヨガ:凝り固まった筋肉をほぐす



 

2011年6月2日木曜日

ロコモの運動療法

ロコモーティブ症候群の運動処方,トレーニング(ロコトレ)の考え方

●高齢者の訴えとして関節の痛みや可動域制限は多い,また,歩行形態が独歩から杖歩行などへと低下する人には,下肢筋力が弱い,片脚立ち時間が短いという特徴がある。
身体を持ち上げる動作は,日常では椅子から立ち上がる動作,階段を上る動作などに相当し生活の基本である。日常生活をスムーズに行うには立ち上がるための下肢筋力が重要。日常生活を十分に送るには片脚で体重の約60%を持ちあげるだけの下肢筋力が必要。
●バランスカの低下は転倒しやすさの原因で,転倒しやすい人とそうでない人では開眼片脚起立時間(バランスカの低下を評価する一般的な方法)に差がある。
●これらのことから、ロコモの予防,治療の基本となるトレーニングとして,「片脚起立訓jと「スクワット」を「ロコモーショントレーニング(ロコトレ)」として勧めている。片脚起立訓練はリスクの高い高齢者に対する転倒と大腿骨頚部骨折の予防法として提唱されたもので、主にバランス能力の訓練を目指している.スクワットは足腰の筋力訓練の代表的なものである。


ロコトレの実際(整形外科学会のパンフレットより引用)



関連ブログ
ロコモティブ症候群